京成立石の餃子の店 蘭州が一旦閉店へ。

初めましての人に一番好きな餃子はどこですか?という質問をよくされる。
一番なんて決められないし、その時の気分もある。味覚は人それぞれだから安易にすすめることもできない。
ゆえにその質問を受けても、うーんどこだろう?最近食べて美味しかったのは…といった形でその問いをはぐらかしてしまう。
でも自分の中にはジャンル別で明確に好きな餃子屋さんが何店舗かあって、定期的にそのお店の餃子を食べに行く。
その自分の中の水餃子ジャンル部門のベストが京成立石の蘭州だ。
ラジオで秋元康さんに自分のイチオシの餃子が食べてもらう大一番も蘭州の水餃子を選んだほど。

旧店の時の水餃子

初めて行ったのは10年前。その日から大ファンになった。
こんなにおいしい水餃子食べたのは初めてだと椅子から転げ落ちるほどのうまさだった。皮と肉餡のバランス感。具材はシンプルだけどばちっと旨味を詰め込んだ肉餡。何よりつるんと飲み込めるほどのサイズ感は私に水餃子の一つの正解を教えてくれた。蘭州の水餃子はどこにも真似のできない唯一無二の餃子であった。

その日から蘭州にはよく食べに行くようになり、カウンターの目の前でお父さんとお母さんの連携プレーでどんどん餃子が出来上がる早業美技を眺めながら、包みたての餃子を食べられるのも蘭州の魅力の一つ。たまにスマホを触ってばかりの一見さんを鬼の形相で叱りつけるお父さんを安全地帯から眺めるのもこっそり楽しみにしていた。

ラーメンもおいしかった。

「一旦閉店」の貼り紙

2023年の8月2日に京成立石で遊んでいた友人から蘭州の新しい貼り紙の写真が送られてきた。
今までも休業やら移転やら何度か長い間営業していないことがあったが、今回の「一旦閉店」のお知らせはそれとは違う。
息子さんのブログによると京成立石駅前の再開発で退去しないといけないが、移転先が決まらないこと、お父さんの腰痛が深刻化していることにより、今後営業するのが厳しいという判断をしたとのこと。家族の関係性、お店の経営のことを知らない一部の人たちが張り紙に「閉店」ではなく、「一旦閉店」であることを面白がっているという。私はその閉店の前に「一旦」という言葉を加えた家族の気持ちが痛いほど伝わってくる。誰も閉店なんてしたくないだろうし、「閉店」と言ってしまうことで湧き上がる今まで積み上げてきたものが終わってしまう怖さ。何かの可能性を残しておきたい気持ち。終わらせることを認めたくない気持ち。でも今後のことなんて誰もわからないんだから「一旦閉店」で良いと思う。いつかまた再開できる日があるかもしれないし、何か別の形で蘭州の名前を使う日だってあるかもしれない。蘭州を好きで通ってた人は蘭州の一旦閉店が解除されるのをこれからもずっと待ち続けるだろう。どんな形でも蘭州のご家族が納得される形になることを心から祈っている。

跡地にはバスターミナルや高層マンションが建つ計画だという。京成立石の再開発は誰のためなのだろう。誰が望んでいるのだろう。この誰が望んでいるかわからない再開発のために蘭州だけじゃなく京成立石で長年営むお店の歴史、家族の歴史が次々と終わっていくのを眺めていると心が痛い。お金で歴史は作れない。クソつまらない悲しいニッポン。

息子さんの記事

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